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何のためにメモを取るのか
2013-04-09
今では社長となったAさんは、新入社員を迎えるシーズンになるとサラリーマン時代に経験したある出来事を思い出し、襟を正すそうです。
それは社会人一年生になった年のことでした。
商談の帰り道にいきなり先輩から怒られたAさんは慌てて記憶をたどりましたが、商談中にミスをした覚えはありません。
「お客様がしゃべっているとき、君はまったくメモを取っていなかっただろ?」。
先輩の指摘にAさんは「なんだそれか」とホッとしました。
確かにAさんはメモを取らなかったそうですが、それは記憶力に自信があったからです。
「私は一度聞いたことは忘れないのでご安心ください」。
Aさんは得意の記憶力を駆使して商談から得た顧客の情報を先輩に披露しました。
我ながらの記憶力に、「ほら先輩、よく覚えているでしょ」と自慢したい気さえしていたそうです。
しかし、Aさんは大きな勘違いをしていたのです。
「君の記憶力はたいしたものだ。
自分で覚えているというなら、それはそれでいい。
だがね、メモは自分のためにあるんじゃない。
相手のためにメモを取る。それが仕事というものだよ」。
人の記憶力は大して当てになりません。
メモというのは忘れてしまうことを前提にした対策です。
それなのに大事な商談でメモを取らなければ、「この人、本当に大丈夫かな?」と相手は不安に思うでしょう。
自分が忘れないためにはもちろん、相手のためにもメモを取る。
それがたとえポーズでも、相手の話を真剣に聞いていることを伝えるためにメモを取る。
それが社会人としての第一歩だという先輩のアドバイスでAさんは、今ではメモ帳を持ち歩くようになったそうです。
30年も前のこの出来事は、「何のためにそれをするのか」という本質的な問いをいまだにAさんに投げかけます。
「自分のためだけなら商売にあらず。
利益最優先ならお客様のためならず」。
今年もAさんが襟を正す時期がやってきました。
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